甲状腺の疾患は決して珍しい病気ではなく、特に女性に多く見られる疾患です。
甲状腺から放出されるホルモンは代謝に関与しており、分泌量が減っても増えても不妊や流産の原因となります。
甲状腺ホルモンの分泌量は視床下部から放出されるTSHによって制御されているため、甲状腺の機能評価にはTSHの数値を用います。
甲状腺とは
甲状腺は、のどぼとけの下にある臓器で、T3、T4というホルモンを放出しています。
これらのホルモンは全身の代謝に関与しているため、多すぎても少なすぎても体に不都合が起きてしまいます。
T3、T4はタンパク質にくっついているものとくっついていないものがあり、くっついていないものをそれぞれFT3、FT4といいます。
FT3、FT4がホルモン活性を持っており、血液検査ではこれらの測定を行います。
甲状腺に関わるホルモン
甲状腺ホルモンの分泌量をコントロールしているのが、脳下垂体から放出されるTSHです。
FT3、FT4が少ない時にはTSHが放出され、その結果FT3、FT4の分泌量が増えます。
逆にFT3、FT4の分泌量が多すぎる時にはTSHの放出が抑制されます(フィードバック機構)。
甲状腺の機能を調べる時には、FT3、FT4の検査ももちろん行います。
しかし、甲状腺の働きが悪くなっても、TSHをたくさん放出することで、FT3、FT4の検査結果は正常ということもあるのです。(この状態を潜在的甲状腺機能低下症と言います。)
つまりFT3、FT4では甲状腺の機能を正確に評価できないこともあるため、甲状腺機能の管理はTSHで行われます。
甲状腺機能低下症と不妊
甲状腺機能低下症では代謝が低下するため、次のような症状が現れます。
・眠気
・むくみ
・体重の増加
・寒がりになる
・便秘
ただし、先ほど紹介したような潜在的甲状腺機能低下症もあるので、この場合は症状が現れない患者さんもいます。
甲状腺機能低下症では受精率、着床率、妊娠率の低下などが報告されており、不妊症の10人に1人は潜在的甲状腺機能低下症を合併しているとも言われています。
多くの甲状腺機能低下症ではTSHが上昇します。
アメリカの甲状腺学会のガイドライン2017では、妊娠前のTSHは2.5μIU/mlを目標にしています。
治療は投薬治療がメインです。
甲状腺機能亢進症と不妊
甲状腺機能亢進症では代謝が良くなりすぎるので、次のような症状が現れます
・だるい
・息切れ
・動悸
・多汗
・食欲が旺盛になるのに痩せる
甲状腺機能亢進症も無排卵や流産の原因となります。
治療は投薬治療や手術を行うことが多いです。
まとめ
甲状腺は私たちの代謝に関わるホルモンを放出する臓器です。
甲状腺ホルモンは視床下部から放出されるTSHによって分泌がコントロールされ、フィードバックによってTSHの分泌をコントロールしています。
そのため、甲状腺の機能評価にはTSHの数値で行います。
甲状腺機能低下症、甲状腺機能亢進症はいずれも不妊や流産に繫がります。
不妊治療を開始する際には検査や治療を受けることが大切です。