PCOSは生殖年齢の女性の5~8%がかかっているといわれる、不妊の原因になる病気です。
患者さんの多くは初潮の頃から月経周期の乱れがみられる反面、痛くもかゆくもないためそのまま見過ごしてしまうこともあります。
今回はPCOSの詳しい解説と、PCOS患者の不妊治療についてご紹介します。
PCOSとは
日本産婦人科学会による診断基準では、PCOSは次の3つの状態を満たすものをいいます。
- 月経異常
- 多嚢胞性卵巣
- 「血中男性ホルモン高値」または「血中LH高値かつFSH基準値内」
月経異常とは具体的には無月経、希発月経(月経が時々しか来ない)、無排卵周期症(いわゆる無排卵月経)のことです。
多嚢胞性卵巣とは、エコー検査で少なくとも片方の卵巣に小さな卵巣がネックレスのように10個以上みられることを言います。
PCOSでは月経異常に加え、不妊、肥満、男性化兆候(体毛やにきびが増える、声が低くなるなど)がみられるとされています。
しかし日本人のPCOS患者は欧米に比べ肥満の人が少ないです。
PCOS患者の治療
PCOSの患者さんで肥満がある場合にはまずは肥満の解消が第一の治療です。
BMIを25未満にすることで、排卵しやすくなったり、症状が改善したりするケースがあるためです。
肥満が解消されている場合の治療は、妊娠を希望しているかどうかで変わります。
妊娠を希望している場合は、次のような流れで治療を進めていきます。
- 排卵誘発剤を使用したクロミフェン療法
- クロミフェン療法にメトホルミンを併用
- ホルモン剤を使用した排卵誘発(ゴナドトロピン療法)や腹腔鏡下卵巣開孔術
- 体外受精・顕微授精
メトホルミンとは糖尿病患者にも使われる薬です。
インスリン抵抗性(インスリンが効きにくくなること)によって排卵が妨げられることがあるため、治療の一環で用いられます。
腹腔鏡下卵巣開孔術とは腹腔鏡を用いて卵巣の表面に穴をあける手術です。
この穴をあける刺激により排卵が回復されることを期待して行われます。
ちなみに妊娠を希望していない場合でもPCOSの治療は必要です。
妊娠を希望しない場合はゲスターゲン(黄体ホルモン)を投与する治療を行います。
この治療は精神的安定やホルモン不足の解消につながりますが、それだけでなくホルモンバランスを整えて将来の子宮体がんや乳がんの発症リスクを下げるという目的でも重要です。
まとめ
PCOSの病態と治療についてご紹介しました。
PCOSの患者さんは「生理が軽くて楽」と考え、婦人科を受診しないケースもたびたび耳にします。
しかしPCOSを放置したまま妊活をしていても、なかなか妊娠に至るのは難しいです。
月経周期が乱れている人や不妊に悩んでいる人はぜひ一度医療機関への受診をおすすめします。