小林麻央さんが若くして乳癌で亡くなり「乳がん検診を受診しよう」という声もよく聞かれるようになりました。
乳癌は肥満の人の増加、そして近年の晩婚化、高齢出産の増加に伴い、罹患率が急上昇しています。
今回は、乳癌の概要と乳癌と妊娠の関係について解説します。
乳癌の概要
乳癌は、乳管や小葉上皮から発生する悪性腫瘍のことで、日本人女性の20人に1人は罹患すると言われています。
好発年齢は40~60歳で、発症ピークは40歳代後半です。
婦人科の疾患の中には、エストロゲンが発生・増悪に関与するものがありますが、乳癌もその1つです。
乳癌自体の進行は遅く、ステージⅠで発見できれば5年生存率は90%以上あります。
一方で、早期より微小転移が起こしやすいという悪い特徴があります。
微小転移とは、目に見えないレベルの転移のことで、治療が終わったと思っても体のどこかに癌細胞が残っていて再発するということも起こります。
ですから乳癌は、乳房だけの局所治療(手術、放射線療法)だけではなく、全身疾患として化学療法、ホルモン療法、分子標的治療を組み合わせて治療を進めることが多いです。
乳癌の危険因子
乳癌の危険因子は次の3つがあります。
①肥満
日本人女性では、肥満は閉経の前後に関わらず、乳癌の発症リスクを上昇させると示唆されています。
(参照:国立がん研究センター「閉経前・後ともに肥満は乳がんのリスクに」https://www.ncc.go.jp/jp/information/pr_release/2014/1007/index.html)
②エストロゲンにさらされる期間が長い
次のような方は、相対的にエストロゲンにさらされる期間が長くなるため、乳癌の発症リスクが高いと言えます。
・初潮が早い(11歳以下)
・初産が30代以上
・出産経験がないまたは少ない
・閉経年齢が遅い
③遺伝要因
家族に乳がん患者がいる場合は、遺伝的に乳癌になりやすいです。
乳癌の治療と妊娠
乳癌になっていない状況であれば、早めの妊娠・出産をすることで発症リスクを下げることが出来ます。
妊娠・出産・授乳中に乳がんが見つかった場合でも、妊娠が乳癌の進行を早めるということはありません。
しかし、乳癌の検査や治療の一部は赤ちゃんへ影響を与える可能性があるので、主治医とよく相談して選択することになります。
また、抗がん剤の副作用で月経が止まってしまう方もいます。
治療後に月経が回復する方もいれば回復しない方もいるので、治療前に卵子や受精卵を凍結しておくこともあります。
乳癌の治療後、妊娠・出産・授乳が乳癌再発しやすくなるという科学的根拠もありませんし、赤ちゃんの奇形の頻度も変わらないとされています。
まとめ
乳癌は日本人女性で罹患率が最も高い癌です。
早期発見できれば予後は悪くないのですが、微小転移しやすいという特徴も持っています。
肥満や晩婚・高齢出産によるエストロゲンにさらされる期間が長いことが発症リスクを増加させます。
妊娠を希望している場合は、早めに妊娠することで発症リスクを下げることが出来ます。
妊娠中に乳癌の検査や治療をすると赤ちゃんに悪影響を与える可能性があるので、主治医とよく相談することが大切です。