不妊治療ではよくホルモンの検査が行われますが、ホルモンの検査は基準値が検査機器や性周期によって変化するため結果を見る時には注意が必要です。
エストロゲンの中でもエストラジオールは卵巣から分泌され、卵胞の発育状態を反映しています。
性周期に合わせて結果を見ることで、卵巣状態の把握やOHSSの発症リスクの予想も可能です。
ホルモンの検査では基準値に注意
不妊には多くのホルモンが関与しているので、不妊治療では度々血中のホルモン検査を行います。
しかしホルモン検査で注意してほしいのは結果の解釈です。
ホルモンの検査は測定に使用する試薬や機器によって基準値が大きく異なるため、結果を見る時にはその検査を行った医療機関の基準値も一緒に見なければなりません。
また、患者さんが転院した場合にも同様の理由で基準値が変わるため、検査結果を単純に時系列で見るのは避けた方が良いでしょう。
さらに妊娠に関わるホルモンは性周期によっても基準値が異なります。
検査を行ったタイミングが性周期のどのタイミングだったのかが分からなければ、正しい結果の解釈は出来ません。
エストロゲンとは
エストロゲンは女性の体内で様々な役割を担いますが、その中でも妊娠に関わる作用は次のようなものがあります・
・子宮内膜の肥厚
・頸管粘液を増やし、粘ちょう度を下げる
なぜエストラジオール(E2)を検査するのか
女性ホルモンのエストロゲンは、分子構造によって次の3つに分類されます。
①エストロン(E1):脂肪組織から分泌。閉経後の主要エストロゲン
②エストラジオール(E2):卵巣から分泌。閉経前の主要エストロゲン(60%)
③エストリール(E3):胎児の副腎や胎盤から分泌
卵巣機能を評価するためにはエストロゲンのなかでも卵巣から分泌されるE2の検査が不可欠となります。
E2の結果の解釈
E2は卵巣機能の中でも特に卵胞の発育状態を反映します。
排卵時期に成熟卵胞が複数できている場合には、その分E2の検査結果は高値になります。
逆に排卵時期であってもE2が低い場合は、卵胞が成熟していない可能性があります。
排卵誘発剤は卵巣を刺激するため、E2の検査値は高値になります。
排卵誘発剤による刺激が強すぎるとOHSSを発症するリスクが高まりますが、E2値を測定することで、OHSSになりそうかどうかを予測することが可能です。
一方、月経期にE2が高値の場合は、卵巣に前周期の卵胞が卵巣に残っている可能性があります。
まとめ
ホルモンの検査では、検査を実施した施設の基準値や性周期を把握したうえで結果を見なければなりません。
エストロゲンは子宮内膜を厚くさせたり頸管粘液を変化させたりすることで、妊娠に向けた体の準備をしてくれるホルモンです。
エストロゲンの中でもエストラジオール(E2)は卵胞の発育状態を反映するため、不妊治療の際にはたびたび検査が行われます。
性周期によって基準値や結果の解釈が異なるため、いつ検査を実施したのを把握してから結果をみましょう。