出産にともない、女性の体には大きな変化が起こりますが、
その変化により、心身ともにトラブルが生じたり、負担を感じたりすることがあります。
今回は産後に起こる心身の不調とそれらのケアについてご紹介します。
乳腺炎
出産後、24~48時間が経過すると、乳房が張ったり痛みを感じたりするようになります。
これは乳汁が分泌されるよう、母体が準備するためです。
この後、赤ちゃんへの頻回の授乳によって乳汁が排出されるようになりますが、乳汁がうっ滞した場合には産後3~4日後頃から乳房の腫れや痛み、熱感などが現れます。
これをうっ滞性乳腺炎と言います。
うっ滞性乳腺炎は、乳汁のうっ滞を解消することが大切です。
ですからケアとしては赤ちゃんへの授乳、乳房マッサージ、熱を持っているときはクーリングを行い、正常に乳房が排出されるように促します。
これらのケアを行ってもうっ滞性乳腺炎が治癒せず、乳腺に細菌が侵入した場合に発症するのが化膿性乳腺炎です。
この場合は乳房の張りや痛み、熱感だけでなく腋窩リンパ節の腫れや38.5度の発熱も見られるようになります。
治療も乳房マッサージやクーリングだけでなく、抗菌薬や消炎鎮痛剤の投与、切開による排膿が考慮されます。
産後の精神障害
産後はホルモンバランスの急激な変化や、母親になったことによる精神的・環境的変化などにより精神障害を起こしやすくなります。
産後に起こる精神障害は一過性に起こるマタニティーブルーズと長期的に起こる産褥期精神病に分類されています。
マタニティーブルーズは産後3~10日頃に軽い抑うつ感、不安感、情緒不安定、不眠などの症状が現れます。
日本では30%の頻度で発症するとされており、決して珍しいものではありません。
症状も2週間ほどで自然に消失するため特に治療は行われないことが多いです。
一方、産褥期精神病は産後1か月以内に発症し、産褥婦の5~10%に見られます。
産褥期精神病は産後うつ病、神経症様状態、非定型精神病様状態、既往の精神障害の再燃と増悪などがあります。
重症化すると自殺につながるケースもあるため、これらの発症を疑った場合には速やかに精神科の診断を仰ぐことが大切です。
まとめ
産後には心身ともに大きく変化し、トラブルを生じることがたびたびあります。
セルフケアはもちろん大切ですが、産後の女性が1人で悩むのではなく周囲の協力を仰いでトラブルを解決していくことが大切です。